甲賀忍法帖
山田風太郎「甲賀忍法帖」を2日ほどで読了。僕からすればモノスゴイペース。
他にも先に買って読んでいない本が大量にあったのに、これも何かの忍術か。気づけば手を伸ばしている。
警視庁草紙とは違い歴史上の人物の群像劇的な物語ではないけれども、2陣営が異能の力で戦うそれはまさに僕の大好物。冒頭の風待将監と夜叉丸の戦闘から面白い。
薬師寺天膳が最後まで外道ラスボスっぷりを発揮していて、弦之助の主人公性が引き立てられていたというか、最近のアニメにも似ているものがある(事実、アニメはあるらしいけれど)。ただ、最近のアニメはあそこまで序盤から死にまくらないんじゃないかな。
物語の尺的には短かったのが少し口惜しい。6巻組くらいで出してくれればよかったのに。
どうでもいいけれど、小学生の時に読んだ伊達政宗の伝記か何かでは、竹千代改め徳川家光って優秀将軍に描かれていたけれども、本書では少し印象が違っていた。
あゝ、忍術欲しい。
山田風太郎のこと
最近山田風太郎がキている。最も、世間的にではなく、僕の中でだけれど。
はじめに山田風太郎がキたのは、多分今年の春の一箱古本市で、「明治バベルの塔」を箱主の方に勧めてもらって、買った時だろう。僕の好きなタイプだった。
「明治バベルの塔」がまず好き。いきなり黒岩涙香が出て来て、それから幸徳秋水が出て来たあたりからもうどうしようもなかった。万朝報という新聞社の存在も(恥ずかしながら)そこで知った。すごいのは、面子的にもすごいけれども、物語的にもものすごく面白いところ。
「明治バベルの塔」がキてから、読書の趣味はのらりくらりと色々なところに飛んでいたけれども、先日図書館で明治小説全集の「警視庁草紙」を借りて読み始めた。僕は明治史がものすごく好きだから、登場人物的にすでに面白い(斎藤一と今井信郎が一緒に三尺棒を振るうシーンとかたまらず体がねじれる)のだけれど、毎回起きる奇想天外な事件と解決も、これまた良い。
毎回毎回の話で知っている偉人が出てくると、テレビに知り合いが出て来たみたいな嬉しさがある。否、当然僕と彼らは全然知り合いではないのだし、その嬉しさとは少し違う気もする。
ところで、彼の小説の中の文豪たちは、かっこいい。「いろは大王の火葬場」の冒頭の斎藤緑雨の葬式のシーンなんか、鼻息が荒くなる。
かっこいいというのではないけど、警視庁草子の方でも、「幻談大名小路」で幼時の漱石と樋口一葉が会って会話するところとか、「幻燈煉瓦街」でこれまた幼幸田露伴が出てくるのとか、こういう描き方も楽しい。
どうやら慶応3年という年はすごいらしく、漱石、露伴、尾崎紅葉、斎藤緑雨、正岡子規と名だたるメンバーが生まれている。調べてみたら宮武外骨もこの年だとか。この人は名前がかっこいくて好きだ。
そんなことを考えながら今日の日経を読んでいたら、千駄木の森鴎外記念館で「明治文壇観測―鴎外と慶応3年生まれの文人たち」なんて特別展がやっているとか。これはさすがに何かの啓示としか思えない。