そてつ書録

読書記録などを残していきます。

山田風太郎のこと

最近山田風太郎がキている。最も、世間的にではなく、僕の中でだけれど。

 

はじめに山田風太郎がキたのは、多分今年の春の一箱古本市で、「明治バベルの塔」を箱主の方に勧めてもらって、買った時だろう。僕の好きなタイプだった。

「明治バベルの塔」がまず好き。いきなり黒岩涙香が出て来て、それから幸徳秋水が出て来たあたりからもうどうしようもなかった。万朝報という新聞社の存在も(恥ずかしながら)そこで知った。すごいのは、面子的にもすごいけれども、物語的にもものすごく面白いところ。

「明治バベルの塔」がキてから、読書の趣味はのらりくらりと色々なところに飛んでいたけれども、先日図書館で明治小説全集の「警視庁草紙」を借りて読み始めた。僕は明治史がものすごく好きだから、登場人物的にすでに面白い(斎藤一今井信郎が一緒に三尺棒を振るうシーンとかたまらず体がねじれる)のだけれど、毎回起きる奇想天外な事件と解決も、これまた良い。

毎回毎回の話で知っている偉人が出てくると、テレビに知り合いが出て来たみたいな嬉しさがある。否、当然僕と彼らは全然知り合いではないのだし、その嬉しさとは少し違う気もする。

 

ところで、彼の小説の中の文豪たちは、かっこいい。「いろは大王の火葬場」の冒頭の斎藤緑雨の葬式のシーンなんか、鼻息が荒くなる。

かっこいいというのではないけど、警視庁草子の方でも、「幻談大名小路」で幼時の漱石樋口一葉が会って会話するところとか、「幻燈煉瓦街」でこれまた幼幸田露伴が出てくるのとか、こういう描き方も楽しい。

どうやら慶応3年という年はすごいらしく、漱石露伴尾崎紅葉斎藤緑雨正岡子規と名だたるメンバーが生まれている。調べてみたら宮武外骨もこの年だとか。この人は名前がかっこいくて好きだ。

そんなことを考えながら今日の日経を読んでいたら、千駄木森鴎外記念館で「明治文壇観測―鴎外と慶応3年生まれの文人たち」なんて特別展がやっているとか。これはさすがに何かの啓示としか思えない。